第6回 できない
WRITER
この言葉、みんなよく使う? 「できない」 試しに呟くだけで、僕はちょっと胸が痛い。 だからできるだけ使わない。 使うときは用心して、きちんと使い方を守って使う。 「できない」ってなんだと思う? 「英語はできない」 「料理はできない」 ほら、みんな簡単に使うよね。 これは実際は、「しない」ってこと。 誰だって、やればできるけど、する気がないからできない。 もしくは、少しはできるけど、それは君の中の「できる」には入らない。 これはそういう意味の「できない」 「空は飛べない」 「若返ることはできない」 これは、君の世界では「ありえない」という「できない」 そして、 「仲良くできない」 「許すことはできない」 「失うことはできない」 これは、「受け入れられない」という「できない」 「しない」 「ありえない」 「受け入れられない」 どれにも共通なのは、「ない」ってことだ。 「できない」とは君の選択肢にに「ない」ってこと。 君の選択肢に「ない」ってことは、君の頭から、君の世界から無くなるってことなんだ。 例えば君が 「あいつを許すことはできない」って宣言したとしよう。 すると、許す世界は君の中から無くなり、許さないことを前提に未来は組み上げられていく。 「できない」って言葉は、できる可能性やできる未来、できる世界を失ってしまう言葉なんだ。 いいかい。 君のこころが一度「ない」と決めれば、君の脳はそれに従って物事を自動的に処理していく。 脳みそってそういうもので、それって怖いことなんだ。 「当たり前のこと、決まり切ったことはわざわざ思い出さない」って機能が脳にはついているものだから、そのうち君は、許す世界があったことや、下手をすると許さなかった理由さえ忘れてしまうんだ。 「人に迷惑はかけられない」 「お金がないからできない」 「若くないとできない」 「人前でうまく話せない」 「旅行はできない」 「一人じゃできない」 人生のどこかの地点でこういう言葉をつぶやいたが故に、その内容はもはや再検討されず、なぜ出来ないかを思いだすこともなく、「できない」だけが一人歩きしていく。 「何もすることがない」 「何もしたいことがない」 「何にもできない」 年取って、こう呟く人は本当にたくさんいて、 これはそれまでの人生でたくさんの「できる」世界を消していって、どんどん世界を狭くして、もう行き場がなくなった人の言葉なんだ。 なのに、自分じゃどうしてそうなったかわからないんだよ。 だから、「できない」って言葉を使うときは、とっても気を付けて、緩みを持ってできるだけ小さく使うんだよ。 「今はできない」とか「この条件だとできない」とか。 できる方法をちゃんと用意しておくんだ。 そうすれば、どこかで思い返して、 「お金が無くてもできる」 「年取ってもできる」 「なんだってできる」 言い返すことができるじゃないか。 どちらの言葉を使うかは、君次第なんだ。