第15回 我慢
「私はずっとガマンしてきました。」
「ガマンするしかないと思ってます。」
こんな風に告白される時があります。
「ガマン」て何でしょう?
見上げた根性?
悲壮な決意?
もしそれが、自ら最善と思って決めた曇りない姿勢なら、それを「忍耐」と呼びます。
そうでないなら、それは受け入れることもできない、拒絶することもできない、
行き場のない態度です。
「負の貯金」と私は呼んでいます。
感情にはエネルギーがあり、我慢して貯めるのは「怒り」「不満」「妬み」「恨み」など
当然、負のエネルギーです。
こうしたエネルギーは、発散するなり昇華するなりして解決しない限り、
実は無くなっていくことはありません。ただひたすら溜まっていくだけです。
これは相当に不愉快なため、よく皆さんが「愚痴」とか「悪口」などという形で他の人に放出し、
何とか臨界値に行かないよう負のエネルギー量を下げているわけです。
「堪忍袋の緒が切れる」というのは、まさしく負のエネルギーダムの決壊を意味します。
大概はそれ自体は些細なきっかけであり、「いきなりキレて」しまいます。
キレられた相手は、なぜ今まで当たり前だったことで相手がいきなり切れるのか、
相手が何を苦しんでいたのか、気づいてさえいないことの方が多いのです。
そうして起こった洪水は、どうしようもない被害と禍根を残してしまうことがあります。
仮に、「ガマン」し続けたとしましょう。
すると負のエネルギーは蓄積し変成します。
相手に対する方向性を失い、自らを攻撃し始めます。
ある日突然、胸が苦しくなったり、めまいが出たり、
澱んだ水がいつかパイプを詰まらせるように、
ありとあらゆる病気の下地となります。
そんな感情を決して溜め込んではいけないのです。
敢えて申し上げます。
「ガマン」は美徳ではなく、怠惰です。
解決しなければいけない問題を棚上げにしているだけです。
最初はごく小さく、大したことではないので、
「自分が我慢すれば上手くいく」みんなそう言います。
でもそれが、毎日毎月毎年になったらどうします?
みんな相手のために我慢し、「俺だって我慢してるんだ!!」なんて我慢の比べ合いになります。
結局、それが原因で破綻するんです。
もしくは、破綻しているのに、そう見せないように我慢し続けます。
「ガマン」をやめたらどうなりますか?
皆さん、もっとひどいことになるといいます。
受け入れられない理由と、やめられない理由が
我慢する苦痛と、我慢を止める恐怖となって
絡んだ糸のようにあなたをがんじがらめにしていることが分かりませんか?。
あなたは一体何を恐れているのでしょう?
暴力?貧困?惨めさ?失望?孤独?
でも、間違いなく、あなたが縮こまれば縮こまるほど、
物事はもっと恐ろしく、もっと厄介になります。
我慢の解決法について、ここで一概に述べることはできません。
しかし、何より大切なのが「ガマン」は解決法ではなく
何も解決していないことなのだと理解することです。
苦労して糸を解くと、人生が変わり、全てが変わります。
誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、我慢しない、人生です。