第51回 『裁く』
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「普通、そういうこと、人に言います?」 「ちゃんとやらない奴を見ると、イラッとするんだ。」 「そんなの、常識だろ!」 こんなセリフ、聞いたことありませんか? 「善悪」とか「常識」とか「礼儀」とか、自分が持っている「正しい」というルールに従わないと、許せない人々がいます。 あなたが善で周りが悪。 あなたが正しくて周りが間違い。 あなたが被害者で周りが加害者。 でも、本当にそうですか? 「善いという事、正しいということを守って初めて人は価値があるので、そうじゃない奴は、ダメな堕落した人間だ。」 そう思ってはいませんか。 本当は、言われて傷つくあなたの劣等感がそう思わせているのではないですか? 「仕事をちゃんとやらない奴を見ると、イラッとするんだ。」 仕事をちゃんとして、その対価としてお給料をもらうというルールがあります。 誰かがきちんと仕事をしないと、周りが困ります。 ですからその人には仕事をしてもらわないと。 その通り。 ではどうするのか。 答えは、その人がどうして仕事をちゃんとしないのか、 その原因を突き止め正すこと。これ以上の方法はありません。 実はちゃんとやらない人間にも千差万別な理由があります。 やらないのか、やれないのか、やらないならやらない理由が、 やれないならやれない理由があります。 例えば今までちゃんとやっても、褒めても認めても成果もくれない環境で生きてきたらちゃんとやる意味がわからなくなります。 ちゃんとやってもやらなくても相手の気分次第で怒鳴られたいり褒められてきても、ちゃんとやらなくなります。 ただ生きるための金を稼ぎたいだけなら、最低の労力でお金を稼ぐことは彼らなりに理が通っています。 生きる意味もわからなかったら、自分のためにも周りのためにも、頑張る意味さえわかりません。 一生懸命やっていても、できない可能性もあります。 仕事がわからないけど怖くて訊けないとか。 できていると思っているけど、間違ってしまうとか。 こだわってしまって進まないとか。 本当にやりたいのに、やる気が出ないとか。 あなたがイラッとした時、怒鳴った時、そうした事情を全てひっくるめて無視して、あなたが裁いているんです。 裁くからには、そのくらいまでは理解しておく必要があると言ってもいいかも知れません。 そしてそこまで理解すれば、おおよそ怒鳴る気は無くなるものです。 「普通、そういうこと、人にいいます?」 何が普通かは、実は人それぞれです。 常識で相手を責める時は、責める前に、なぜ自分がそれを不愉快に思うのかをしっかりと知っておく必要があります。 相手を責めるその裏には、自分の劣等感やトラウマが隠れている可能性があるから。 だから、なんであれ、何かをもって相手を裁く時、その時の自分の心根を見つめてください。 自分の傷心を隠す為だったり、自分の虚栄心を満足させる為だったり、 自分の「正しい」で囲った狭い世界が崩れるのを避ける為だったり、 相手を叩き潰す為だったりしないか、見つめてください。 もしルールを守らせたいなら、相手のためになるように、相手の耳に届くように言ってください。 そう思った時には、相手を理解すること以上にいい方法はないのです。 世の中嫌いな人間も、苦手な人間もいます。 それは、あなたと違う生き方をしているだけです。 どんな人も、幸せになるために必死で生きている人たちです。